デュオドーパの使用を予定している方のQ&A

デュオドーパの使用を予定している患者さんが不安に感じると思われる主な事柄を、
Q&A形式でわかりやすく解説しています。

  • どのような治療ですか?

    飲み薬の効きが安定しなくなって、手足がふるえる、筋肉がこわばる、動きが遅くなる、バランスがとりづらくなるといった運動症状に悩まされている患者さんのための治療です。
                    この治療は、レボドパにカルビドパを加えたレボドパ製剤という、パーキンソン病の飲み薬として広く使われている成分のお薬を、専用ポンプとチューブを用いて直接小腸に送り届ける投与方法で行います。
                    なお治療にあたっては、手術で胃瘻(胃ろう)を造って、そこからチューブを小腸まで挿入する必要があります。
  • なぜ直接小腸に投与するのですか?

    パーキンソン病を長く患っていると胃や腸の動きが悪くなってきて、食べ物やお薬が胃に滞るため、飲み薬が小腸まで達して吸収されるプロセスが不安定になります。
                    そのため、効果がなかなか出なかったり、効果が短くなったり(ウェアリングオフ)効果が急に出ることで不随意に体が動く(ジスキネジア)などの望ましくない症状が発生することがあります。
                    お薬を直接小腸に投与することによって、安定した吸収を可能にします。
  • どんな手術をするのですか?

    内視鏡を使って「おなかに小さな穴」を造り、お薬を注入するための器具を取り付けます(経皮内視鏡的胃ろう造設術:PEG)。
                    造られたおなかの穴を胃ろうといい、取り付けられた器具を「胃ろうチューブ」といいます。
                    鼻からのチューブなどに比べて患者さんの苦痛や介護者の負担が少なく、喉にチューブがないために食事や会話に支障をきたさないというメリットがあります。
                    なお胃ろうチューブは抜けないように、胃内固定板と外部固定板で止めます。
  • 胃ろうから挿入するチューブってどのようなものですか?

    PEG-J チューブというもので、胃まで届く胃ろうチューブと小腸まで届く小腸チューブによって構成されています。
                    どちらも一般的には、長期的使用を目的として経腸栄養を与えるために胃に外科的に配置されるチューブです。
  • 効果はありますか?

    胃ろうを造る前に、鼻から通したチューブ(NJチューブ)とポンプを使ってお薬を投与し、お薬の効果を確認しながら、実際に小腸から吸収した場合の適量と安全性を確認します。
                    効果と安全性が確認された患者さんのみが、この治療を行えることになります。
  • 一度はじめたら止められないの?

    止められます。
                    中止する際は、胃ろうから挿入しているチューブ(PEG-Jチューブ)を取り除きます。
                    チューブを抜いた後、胃の粘膜は約3時間程で修復され、おなかの傷もほとんど目立たなくなります。
  • 治療のメリットは?

    メリットは、血液中のお薬の濃度が安定することにより、お薬の効果が十分に発揮されることと、オフ時間が少なくなることが期待できることです。
                    この治療で使われるお薬の成分は、レボドパにカルビドパを加えたレボドパ製剤です。
                    レボドパは体内でドパミンに変化し、カルビドパはレボドパの効果を高め、同時にレボドパの好ましくない作用を抑えます。
                    このような成分のお薬はすでに飲み薬として広く使われていますが、パーキンソン病が進むに従って、飲み薬では血液中のお薬の濃度を一定にすることが難しくなってきます。
                    なぜなら、レボドパは小腸から吸収されて効果を現しますが、パーキンソン病の患者さんは胃や腸の動きが悪くなり、小腸からのお薬の吸収が不安定になってくるからです。
                    この治療は、カセットに入ったお薬を専用ポンプとチューブを使って、直接小腸に切れ目なく送り届けることによって、お薬の血液中の濃度を安定させることが期待できます。
  • 治療のリスクは?

    どのようなお薬でも副作用はあります。
                    この治療には、お薬によって発生する可能性のある副作用の他に、器具や胃ろうに関連して発生する可能性のある副作用もあります。
                    急な体調の変化や副作用と思われる症状、気になる症状があらわれた場合には、ただちに主治医や医療機関に連絡してください。
  • 入院期間はどれくらい?

    患者さんや医療機関によって入院期間が異なってきますが、全体で2週間から4週間程度になります。
                    まず実際のお薬に近い成分の飲み薬でお薬の量を検討した後に、鼻から小腸にチュープ(NJチューブ)を通してデュオドーバ配合経編用液を投与します。ここで、お薬の効果を確認しながら、実際に小腸から吸収した場合のお薬の適量を調整するとともに、副作用の程度を確認します。
                    お薬量の調整によって効果や副作用の程度を確認して、この治療が適していると判断されたら、胃ろうを造る処置を行い、胃ろうから小腸にチューブ(PEG-Jチューブ)を通します。
                    投与するお薬の量を微調整し、お薬の投与量が安定して、患者さん自身あるいはご家族などの介護者が、お葉やポンプなどの取り扱いに関する手技を習得し、主治医や看護師が在宅治療に移行しても問題ないと判断すれば退院です。
  • 器具の使い方が不安です

    入院中に患者さん本人及びご家族に対して、医師や看護師が、病院独自のツールや患者さん用ポケットガイドを使って指導を行います。
                    そして、ポンプ操作、チューブ接続、アラーム対応、食事の注意点など、在宅治療で必要な手技や知識を、主治医や看護師が在宅治療に移行しても問題ないと判断できるレベルまで習得していただきます。
                    また、緊急時の対処方法の説明や、必要な場合は在宅でのケアサポートも計画します。
                    わからないことや不安なことは、遠慮せずに相談しましょう。
  • どのような生活になりますか?

    毎日、起床時と就寝前に行わなければならない作業以外に、専用ポンプをウエストポーチなどのバッグに入れて自由に行動することができるので、基本的に今までの生活を変える必要はありません。
  • 毎日しなければいけないことは?

    日々必ず継続的に行わなければいけない作業は、朝と夜の手順、及び胃ろうのケアです。
                    なお、日中オフになった際には、追加投与を行います。
                    また、日々の体調やお薬の服用状況を患者日誌に記録しましょう。
                    こちらも毎日行うことをお勧めします。
  • 胃ろうのケア時は、どのようなことを観察しますか?

    手を清潔にして、胃ろう周囲の炎症や胃ろう周囲の感染の兆候がないか観察します。
  • 感染予防のためには、どうしたらよいでしょうか?

    感染を防ぐためには、毎日の作業をできる限り清潔な環境で行うことが重要です。
                    そして、医師の指示に従って、胃ろう周囲の皮膚は常に清潔で乾燥した状態を保つこと、また皮膚だけでなく、胃ろうチューブや外部固定板もきれいに保つことが重要です。
  • なぜ、16時間投与なのですか?

    日中16時間を超えて投与したとき、及び夜間の就寝中に投与した時の有効性及び安全性は確立していません。
                    なお、就寝中のお薬に関しては、医師の指示に従ってください。
  • 入浴はできますか?

    シャワーや入浴は、通常、胃ろう造設処置後1~2週間から可能です。
                    ただし、ポンプは防水ではないため入浴時には外します。
                    またポンプは、サウナなどの高温多湿の場所でも外してください。
  • 旅行はできますか?

    胃ろうの傷口が完全に治癒し、医師の許可があれば、宿泊を伴う旅行にも出かけられます。
                    なお、その際にはお薬の入ったカセットをクーラーボックスに入れて移動し、宿泊先に着いたら冷蔵庫に入れるようにします。
  • 飛行機には乗れますか?

    機内圧が高度に左右される小型機を除けば、航空機がポンプの作動に干渉することはありませんし、ポンプが航空機の電子機器に干渉することもありません。
                    また、空港の保安検査で金属探知機が作動することがありますが、金属探知機がポンプに悪影響を及ぼすことはありません。
                    ただし、航空機利用の際には、毎回航空会社に連絡する必要があります。
                    航空券を購入する際には、医療機器を機内に持込むことを伝え、航空会社の指示を受けてください。
  • してはいけないことは?

    ポンプの動作に支障をきたすこと以外は、特にありません。
                    電磁波はポンプ動作に影響を及ぼす場合があります。
                    IH調理器、EMSマッサージ器や各種電化製品をご使用の際には、できるだけポンプを離してください。
                    また、シャワーや入浴、温泉に入ることはできますが、ポンプは防水ではありません。
                    液体や水分でポンプが破損する可能性がありますので、入浴の前には必ずポンプを止めて外してください。
                    サウナなどの高温多湿の場所でも使用しないでください。
  • ポンプのアラームがなったら?

    ポンプのアラームがなった場合は、患者さん用ポケットガイドの記載に従って対応してください。
                    問題が解決されない場合は、病院に連絡するか、コールセンターに問い合わせてください。
  • ポンプの電池が切れたら?

    ポンプはアルカリ乾電池単3形2本を使用します。
                    電池の寿命は約1週間ですが、温度などの条件で寿命が違ってきます。
                    常に予備の電池をご用意ください。
                    なお、電池の残量が少なくなるとアラームがなります。
                    この段階で電池を交換するようにしましょう。
                    そのままにしておくと完全に電池がなくなり、別のアラームがなってポンプが完全に停止します。
                    万一、電池が切れても速やかに交換し、ポンプを再作動させれば問題ありません。
  • ポンプやチューブはずっと同じものを使うのですか?

    ポンプは1年に1度、ポンプ機能の点検を行います。
                    点検月の1か月前を目安に連絡があります。
                    チューブの交換期限は特に決められていません。医師の判断により交換します。
  • ポンプの費用はどうなりますか、故障の際は?

    ポンプは病院からの貸与品になり、費用は外来の保険診療でカバーされます。
                    また、故障の際は、病院に連絡をして対応してもらいます。
  • 薬はどこでもらうの?

    薬局に処方せんを出して、お薬を受け取ります
                    。受け取ったお薬は、必ず冷蔵庫に入れて保管しましょう。
  • 薬の保管は?

    お薬は光に敏感ですので、カセットは必ず箱に入れたまま冷蔵庫(2°C~8°C)に保管してください。
                    誤って室温で保管した場合は、投与しないでください。
                    お薬を持ち帰る場合も保冷した状態(2°C~8°C)を保ってください。
                    お薬を使用するときは、カセットを冷蔵庫から取り出した後、20分間置いてから使用します。
  • 残った薬はどうすればよいですか?

    使用済みのカセットは、お薬が残っていても必ず廃棄してください。
                    廃棄方法は、地域ごとに異なります。
                    お住いの市区町村の規則にしたがって、廃棄してください。
  • 病院にはどのくらい通うの?

    退院後、定期的に外来で診察を受けていただきます。
                    主治医の指示にしたがってください。
                    また診察の際には、患者日誌をもとに在宅治療指導も行われます。
  • 検査や治療の際は、どうすればよいですか?

    ポンプは精密機器です。
                    歯科や胸部レントゲン検査などではポンプを取り外す必要はありませんが、検査や治療によっては一時的に取り外していただく場合があります。
                    事前に主治医に相談して、ご不明な点があればコールセンターに問い合わせてください。
  • 緊急なトラブルの際は、どうすればよいですか?

    デュオドーパの治療に関すること、質問や困ったことがあれば、デュオドーパコールセンターにお電話ください。24時間365日、看護師が対応しています。(コールセンターは、患者さん用ポケットガイドや患者手帳、患者日誌の末尾に記載されています。)
                    緊急時には、病院や主治医に至急連絡して、指示に従ってください。
  • 経済的な負担はどのくらいですか?

    パーキンソン病の患者さんには、療養環境改善を目指した様々な公的支援制度が設けられています。
                    詳しいことは、医療機関や市区町村の窓口等にお問い合わせください。